国の中の人天『仏説無量寿経』

新型コロナウイルスの感染が確認されたクルーズ船に対しての日本政府の対応が批判される中、ネットや巷の声に「なぜ日本が批判されなければならないのか」「そもそも船はよその国の船ではないか」「中国人がもってきたウイルスではないか」「中国人が持ってきたウイルスで日本が批判されるのは腹が立つ」「入れさせるな、さっさと帰れ」等の声がありました。

 

もしも、あの船に中国人の友だちが乗っていたら、どう思うでしょう。また、家族が乗っていたら、知り合いがいなかったとしても、目の前で苦しんでいる人を見たら、それが我が子と同じ年頃の人だったら、「助けてください」と言っている人を前にして、「さっさと帰れ」と言えるでしょうか。

 

私たちは「国」というフィルターが目の前にかかってしまうと、「一人」が見えなくなります。

 

『仏説無量寿経』には、仏様の四十八の本願が説かれていますが、そのうち、十六ケ所の本願の冒頭に「国の中の人天」と出てきます。これは「国の中の人々」「国の中の一人一人」という意味です。

 

また、親鸞聖人の一生を尋ねてみると、35歳で流罪にあい、その地で出会われた「いなかの人々」、その一人一人と出会ってこられたのでした。この時代に生きる、何一つ後ろ盾も持っていない、およそ国というものを背景に持っていない丸裸の「一人」に出会ってこられたのです。

 

私たちは国というフィルターをかけて物事をみるとき、そこに生きている「一人」「一人の苦しみ、悲しみ」が見えなくなってしまうという問題を常に持っていることを忘れてはならないのではないでしょうか。

 

(文/木屋 行深)

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